冬のピラウトルイ
北海道上空、飛行機の窓から見える景色。
あたり一面が雪を纏い、鉛筆画のように浮き上がった様子に息をのむ。
まるで別の惑星にきてしまったかのよう。
胸が高鳴り今すぐ飛び出したい衝動にかられる。
空港に到着し外にでると、迎えに来てくれたパートナーを発見。一ヶ月ぶりに会う彼は雪焼けし、ほっぺには凍傷の痕がある。年中標高の高いところで過ごす彼は山のエキスパートで一緒に旅をするとすごく面白い。変わらず元気で嬉しい。
空港からそのまま平取へ向かう。
町や雪の具合など窓から見える景色が少しずつ変化するのでずっと見ていても飽きない。
牧場の馬や牛は草を食み、沙流川の表面はところどころ凍っている…森の中でキタキツネが立ち止まり、一度こちらをみて走り抜ける姿がたまらなく可愛かった。
ちょっとしたことを確かめるたび、私は今北海道にいるのだと嬉しい気持ちがこみ上げる。
2時間後に到着した平取町二風谷は、静かで威厳のある空気が漂っていた。
神の鳥フクロウを掲げた民宿、アイヌの男女の木彫り像、アイヌ料理のお店、伝統工芸店…
目に飛び込んでくる情報が全て新鮮だ。
目的地は平取町アイヌ文化博物館。
博物館は面白く、アイヌの知恵を体験できたりととても充実した内容で展示に張り付くようにしているとあっという間に時間が経つ。
(幼馴染みがここで働いていたのだが、たいそう可愛がられていたようで話をきいて私が嬉しくなった。)
ここに来てアイヌを愛するあたたかい人たちにも出会い、話す中で彼らの姿から感じたのは彼らのそばにあるアイヌの文化や精神を後世にむけ大切に受け継ごうという熱量だった。言葉の端にそれが柔らかく伝わってくる。
アットゥシ織の様子をみたいと職人さんに言うと、夏来たらいいと教えてくれた。
それにしても、衣装はあまりの美しさで口がぽかんと開いてしまう。
着古され、とろりとしているものなんか、特にたまらない。
沖縄の上布やアイヌのアットゥシを見ると口に入れてみたくなるのは私だけではないはずだ。
(アットゥシは実際に口に含むと香りのまんまの、なんとも言えない味なのだが)
宿に到着したその夜、ひとり部屋をぬけだし温泉へ行った。誰もいない。
外湯で吹雪の中、お湯に浸かっていると不思議な気持ちになった。
すさまじいはやさで発展を遂げるこの時代の先、私たちは形に見えない大切なものを忘れずに握りしめ、また新しいところへ歩き続けられるのだろうか。
白い世界のなか水面にふれジワリと消える雪を眺めながらぼんやり考えていると、頭に雪が積もっていた。
____
ピラウトルイはアイヌの言葉で「崖の間」という意味です。今は平取と呼ばれています。
多良間でのつづきをかこうと思いつづけているけれど、色んなことがありすぎてまとめられずにいます。
私にとっての核となっていくに違いない旅だったので記録をまとめたいのですが、、、
いつになることやら。
0コメント